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「1階リビングだけ」の落とし穴。家族の成長とともに始まったテレビの奪い合いと不協和音
沼田市で新築注文住宅の間取りを考えるとき、誰もが「家族全員が集まる広々とした1階リビング」を一番の主役に据えると思います。私もそうでした。「コンパクトな家だから、リビングさえ広ければそれでいい。家族はいつも一つの部屋に集まるのが一番の理想」と、なんの疑いもなくプランを進めていたのです。
ところが、新居での暮らしが始まり、子どもたちが小学校高学年や中学生へと成長していくにつれて、我が家の1階リビングのタイムライン(時間の流れ)は少しずつギスギスしたものに変わっていきました。
夫がソファで大画面のプロ野球中継を見たいとき、子どもはスマホで動画配信を流しながら友達と通話したいと言い出し、私は静かに読書を楽しみたい。狭いワンルーム型のLDKでは、それぞれの「やりたいこと」の音や視線がぶつかり合い、誰かが楽しんでいるときは、誰かが部屋の隅で窮屈な思いをして我慢する、という不条理な状態に陥ってしまったのです。家族が同じ部屋にいるのに、どこかピリピリとした空気が漂うリビングで、私は「家族が集まる場所を1カ所しか作らなかったのは、設計上のディフェンス(自衛)不足だったのかもしれない……」と、一人で冷や汗を流しました。
「ただの廊下」にするくらいなら。間取りの打ち合わせでねじ込んだ2階の3畳の空間
この問題を解決するために、私が着工前の図面打ち合わせで設計士さんに「どうしても作ってほしい」と滑り込ませたのが、2階の階段を上がったホールの横にある、わずか3畳ほどの『セカンドリビング』でした。
当初、その場所は部屋と部屋を繋ぐだけの、ただの広い通路(廊下)になる予定でした。坪数や建築費用といった予算の器に制限があるなかで、わざわざ2階にもう一つリビングを作るなんて贅沢すぎる、と最初は躊躇したのも事実です。
しかし、私はあえて「通り過ぎるだけの廊下」を極限まで引き算し、その面積をひとまとめにして、オープンな多目的スペースへと設計を変更しました。壁を一切作らずに、階段の手すりや天井のクロスを工夫することで、1階のメインリビングとは完全に異なる『もう一つの居場所』を、図面の上でしっかりと確保したのです。
3畳の「逃げ場」があるだけで、家族の距離感が劇的に優しくなった理由
こうして完成した2階の小さな隠れ家空間は、住み始めてから予想を遥かに超える大活躍を見せてくれました。まず、生活の不協和音がピタッと消え去りました。
夫が下でスポーツ観戦に熱中しているときは、子どもたちが2階のセカンドリビングに移動して、お気に入りのビーズクローク(クッション)に体を預けながらタブレットで動画を楽しんでいます。また、夜間に私が静かにストレッチをしたり、ヨガをしたりする空間としても最適でした。1階と2階で「音」と「視線」のタイムラインを綺麗に仕分けることができたおかげで、家族の誰一人として我慢を強いられない、本当の機能美を実感しています。
何より素晴らしいのは、この空間をあえて「壁のないオープンな場所」にしたことでした。個室にこもってしまうと、どうしても家族の気配が断絶して孤独感が出ますが、階段を通じて1階の気配や笑い声がうっすらと届くため、離れていても寂しさがありません。1階で家事の動線に追われているときも、2階から子どもたちの楽しそうな声が聞こえてくるだけで、家全体の空気が穏やかになるのを感じています。
ただの「物置」にしないために、私が基本設計で仕込んだ3つのポイント
2階の共有スペースは、なんとなくで作ると「ただの洗濯物干し場」や「季節外れの荷物置き場」として窒息してしまいがちです。私たちが快適なサブリビングとして機能させるために、着工前に図面で徹底したこだわりがこちらです。
■ 「ハイドア」の死角を利用した、1階から見えないゾーニング
階段を上がってすぐの場所ですが、1階のメインリビングから2階のサブリビングの床が丸見えにならないよう、階段の角度と壁の配置を計算してもらいました。このちょっとした目隠しの工夫のおかげで、2階で子どもたちがクッションを散らかしてゴロゴロしていても、1階のすっきりしたインテリアの邪魔をしません。
■ コンセントと「壁掛けテレビ用」の下地補強
将来的に子どもたちが成長してゲーム機や小さなテレビを置くことを見越して、あらかじめ壁の中にベニヤの下地補強を入れ、コンセントも多めに配置しておきました。これによって、置き家具を増やさずに壁掛けでテレビをすっきり収めることができ、3畳という狭い有効寸法でも圧迫感のない空間をキープできています。
■ 家具移動のための「カニ歩き」にならない通路幅の確保
セカンドリビングの横を通り抜けて子供部屋へ向かう動線は、将来的に大きなベッドや学習机を搬入することを想定し、曲がり角の幅を広めに設計しました。狭小住宅にありがちな「家具が階段を曲がりきれなくて部屋に入らない」という不条理なトラブルを、設計の段階で完全に自衛(ディフェンス)しています。
「部屋の広さ」を求めるより、「居場所の数」を増やす間取りの知恵
注文住宅を建てるとき、私たちは「リビングは何帖なければいけない」「子供部屋は絶対に5帖以上」という、固定観念に縛られてしまいがちです。しかし、実際に家族の成長とともに暮らしてみて分かったのは、1つの大きな部屋の広さを追求するよりも、家の中に『ちょっと気分を変えて過ごせる居場所』が複数あることの方が、はるかに日々の暮らしを豊かにしてくれるということです。
廊下をただの通路として終わらせるか、家族が奪い合うお気に入りの隠れ家にするか。それは、設計図面にほんの少しのアイデアと引き算を仕込めるかどうかで決まります。たとえ30坪に満たないコンパクトな住まいであっても、垂直方向のつながりや、動線の重なりを上手に仕分けることで、数字以上の広がりと心地よさを備えた最高の城はいくらでも作ることができます。
世間の標準プランに自分たちのライフスタイルを無理やり当てはめ、窮屈な思いをするのはもう終わりにしましょう。これから先の未来、家族それぞれがどんな風に自分の時間を楽しみ、どんな風に寄り添って生きていきたいか。そのリアルなソフト面を想像しながら、間取りの中にそっと小さな「逃げ場」をデザインしてみてください。何年経っても家族みんなが笑顔で、それぞれの居心地を尊重し合える、素晴らしい住まいが形になることを心から願っています。
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